第1回

動物愛護について語り合うIDA(アイダ)スペシャル対談。1回目は作家の大村あつしさんをゲストにお迎えして、お話しさせていただきました。
大村さんは、ITや経済分野の専門家で多数の関連書籍を執筆されているほか、差別など様々な社会問題をテーマにした小説でも注目される人気作家です。
現在は東京から静岡に拠点を移して、文筆活動はもとより講演会などでもお忙しい日々を送られていますが、ご自身も愛犬家で、動物愛護に強い関心をお持ちとのことから、今回、IDAの立ち上げに際し、応援のためにはるばる静岡から駆けつけてくださいました。


木下:本日はお忙しいなか、誠にありがとうございます。

大村:いえいえ。実は、私が長年応援させていただいている板橋区議の橋本祐幸さんから、今度、板橋区内で動物愛護活動を本格化させるために、木下さんと共に協会を立ち上げると伺ったものですから、つい嬉しくなってはせ参じました。いよいよ旗揚げですね。

木下ふみこ
木下ふみこ

木下:はい。具体的な活動はこれから徐々にですが、ともかく新たなスタートラインに立つことはできました。犬や猫の「殺処分を失くす」ことは私の政策の重要なひとつですし、所属している都民ファーストの会の公約でもあるので、会としても都の福祉保健局に積極的に働きかけたり、殺処分問題の解決に向けて、根本的な解決に至る政策を実現するために、動物愛護活動に取り組まれている方々のお話をお伺いしたり、シンポジウムや譲渡会などのイベントに参加したり、文献を読んだり、動物愛護センターを視察したり、と動いています。そうしているうちに、もっと踏み込んだ形で、人と動物がより快適に、そして幸せに共生できる街をつくっていきたいという思いがだんだん強くなりまして 。そこで、以前から地元で動物愛護に尽力されている橋本区議にご協力をお願いしたところ、心よくお受けいただいたので、ここ板橋区を拠点に、ご一緒に動物愛護活動を行っていくことになりました。

大村:それは素晴らしいですね。私も愛犬家で犬を飼っているものですから動物愛護にはとても関心があるんです。特に最近、犬を散歩させていると気になる光景に出くわすことが度々あって、これはいったいどうしたものかと思っていたので。

木下:と、おっしゃいますと?

大村:私の住まいは静岡県の富士市なのですが、この地域には富士山を一望できる大きな自然公園があるんですね。それこそ梅や桜の時季ともなれば地元の人たちだけでなく、県外からもたくさんの人たちが遊びに来ますけど、ここに犬が捨てられるんです。

木下:公園にですか?

大村:ええ。これはもう虐待を通り越していますよね。こうなると法律がどこまで人の生活習慣に入り込めるのかといったような問題になるのかも知れませんが、例えばインターネットを例にしますと、一時期「インターネット使用は実名制や登録制にすべきだ」という議論がありましたよね。あの頃話題になっていた掲示板への匿名によるに書き込みがあまりにも酷かったものですから。しかしながら、悪質な書き込みが減っていない今でもまだ規制がかけられていないのは、利用者を信頼してのことだと思うんですね。インターネットは、性善説つまり私たちの良心に基づいて使われるものだと。では、命ある生き物の犬を公園に捨てるとはどういうことなのか。これはもうすでに人間の性善説に頼っていては、防ぎ切れない状況になってきているのではないかと思うんです。

木下:東京の都心では住宅が密集していたり人の目が近くにあったりするので、公園に動物が捨てられることは稀だと思いますが…。

大村:残念ながら、地方だとそうした行いをする人がゼロというわけではないと思います。広い場所も沢山ありますから。かといって自然公園を24時間監視するわけにもいきませんよね。実際公園に捨てているのか、山に捨てられた犬が人間の残飯を目当てに公園に集まってくるのかは私も定かではありません。ですが、ともかく公園やその近辺に捨てる人がいることは確かです。地元の人なのか、他県から捨てに来るのか、これもわかりませんけど。ただ、こうした問題は全国規模で起こっていても不思議はないと感じています。

木下:調べてみないと何とも言えませんが、各自治体とも国が定める動物愛護管理法に基づいて対策は取っていると思うんですけど、現実はなかなか厳しいですよね。

大村:そもそも簡単にペットが買えるというのも問題があると思います。ただ可愛いからとか、ひとりだと寂しいからとか、ものすごく短絡的な理由でペットを買う。それでいざ飼ってみると、思いがけずに繁殖してしまったり、思い通りにならなくて持て余してしまったり…。結局途中で飼えなくなって、殺処分の対象になってしまう。そんな状況は少なくないですよね。

木下:確かに今は簡単に手に入りますからね。ペットショップに行けば小さくて可愛い子がたくさんいて、誰だってお金さえ払えば自分の好きな子をすぐに連れて帰れる。でも、実際は生き物だから世話も必要だし、言うことを聞かない時もあるし、あっという間に大きくなるし。それで可愛くなくなったからもういらない、なんて。こんなことは絶対にあってはなりませんよね。飼う人のモラルやマナーも向上してもらわないと、ペット問題はいっこうに解決しません。

大村あつし
大村あつしさん

大村:未婚や非婚率がどんどん上がっている現状をみると、これからの時代は動物がパートナーとしての役割を果たすことも多くなると思うんです。だからペットという呼び方自体もう時代にそぐわなくなってきていますよね。それほど大切な存在なのに、一方では心ない扱いを受ける動物もいる。そんな不幸な動物のために何かできるのは、やっぱり人間しかいないんです。極端な話、動物愛護管理法をもっと厳しくして、今法律で決まっている「愛護動物を遺棄したら100万円以下の罰金」から「懲役半年」ぐらいに変えてしまうとか。ひどい飼い主がたくさんいるからこんなに動物愛護が叫ばれているわけですよね。木下さんはこうした無責任な飼い主は厳しく罰したほうがいいとは思いませんか。

木下:そうですね。そうした飼い主にはある程度の罰則が必要かもしれませんね。実際に、国が定めている動物愛護管理法も5年ごとに改正されて、規制が強化されているんですよ。その効果もあって、東京都はじめ、どの自治体でも殺処分は減ってきているとは思うのですが、全国規模でみればまだまだ厳しく規制していく必要はあるでしょうね。ただ私はどちらかというと、飼う前の段階で何かもっと条件を設けたほうがいいように思っているんです。

大村:簡単に買ったり、飼ったりできないようにですか。

木下:はい。私は動物を飼うのは子供を育てるのと同じだと思っているんです。だから、罰則も必要かもしれませんが、飼う前にハードルを設けることも必要だと思っているんです。大切な命なので、責任を持てない人は本来動物を飼ってはいけないんですよね。そうした認識を持ってもらえるよう啓発していくことも大切なのではないかと。例えば、ペットを飼うためには、マナー講習や試験を受けなければならないとか、資格を取らなければならないとか。そういった高いハードルをつくることで、気安く動物を飼うという行為は減っていくと思うんです。それから、ヨーロッパには飼い主にペット税を課している国があります。それと同じように日本でもペット税を徴収して、動物福祉のために使う というのも一つのアイデアですね。

大村:それはいい考えですね。私の専門は経済なのですが、クルマやタバコ、お酒には高い税金がかけられていますよね。これは専門的には「外部負債」と言うんですが、簡単に言うと、それには他者への迷惑料という意味合いも含まれているんです。クルマに乗ったり、タバコを吸ったり、お酒を飲んだりすると何かしら他人に迷惑をかけることになる。だからその分税金を払って、社会に役立ててもらおうというわけです。動物も同じように考えることができますよね。飼わない人の中には迷惑に思っている人もいるでしょうから。それに、その税金が目的税として動物福祉に使われるなら、飼い主も喜んで払うのではないでしょうか。

木下:そうですよね。ただしこれを実施するには、税金の徴収方法をそうとう工夫しないといけないことがわかっているんです。実は日本でも昭和57年までは犬税を課していた自治体がありまして、近年でも大阪の泉佐野市が平成26年に犬税の導入を検討したことがあったんです。でも、いずれも徴収コストが税収を上回るといった理由から、断念したという経緯があります。だから簡単なことではないのですが…。

大村:そうなんですか。ペット税なんてとてもいいアイデアだと思うんですけど…。確かにどこにどれだけの動物が棲んでいるか、全部調べて課税するのはちょっと大変かもしれないですね。隠す人も出てくるでしょうし、下手したら飼い主がいない場合もありますから。

木下:ともかく、責任をきちんと理解した上でないと、飼育の権利が与えられないというような制度や税制があれば理想的だと思います。そうすれば、動物を取得するまでの手間やコストがかかるわけですから、そう簡単には手放せないですよね。もっとも本当に動物のことを考えている人であれば、そこまでやらなくても自分の家族として、あるいは自分の大切な子どもたちのためにも、一生大事に扱ってくれるでしょうし、途中で飼育放棄するようなことはまずあり得ないと思います。さらに言えば、もし万一飼えない事態が発生したとしても、譲渡の仕組みがきちんと成り立っていれば、不幸な運命を辿る動物の絶対数は今よりも確実に少なくなりますよね。

大村:そういった案はまだ議題に上ったりしていないんですか。

木下:「免許制」や「税制」などまで踏み込むとなると、これは東京都の条例というより、国の定める「法律」によるしかない。都議の私はそれを決める立場にないのですが…。「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」も改正の時期にきているのですが、議員立法であることもあり、状況を探ってみると、改正法成立はなかなか難しいようですね。

大村:優先順位としては、動物関連はまだまだ低いんですかね。人間自体に余裕がないから動物まで気が回らない。

木下:確かにそういったご意見もいただきます。老人介護や待機児童の問題のほうが優先だと。でも、例えば動物を飼う前のハードルを上げることは、大した予算も手間もかからないから、優先順位の天秤に掛ける必要もないと思うんですね。動物愛護の問題はちょっと手を加えれば大きく効果が上がる、テコの原理が大きく働くレバレッジ効果の高い政策だと信じているんです。だから、まずは、動物愛護活動を行うことは、みんなの暮らしを豊かにすることにつながるんだということを多くの方々に分かってもらう必要があります。ペットを飼う人飼わない人、動物も含めてみんな共生して相手を思いやる社会にするということは、実は高齢者や小さな子どもや、障がいがある人にも生きやす い、潤いのある豊かな社会になるのだということを、たとえ世知辛い世の中でも訴えていくのが私の務めだと思っています。そして、市民運動とか社会運動などがだんだん盛んになって、世論の声が国を動かすまでに高まっていけば、世の中は大きく変わるのではないでしょうか。

大村:わかりました。ではこれかは私も動物愛護を声高に叫んで、IDA(アイダ)を一生懸命応援していきます。それがムーブメントとなって地方にも波及してくれば、今いるような気の毒な犬もいなくなりますね。それから…、徴収コストを抑えられるようなペット税の仕組みも考えてみます。

木下:ありがとうございます。どうぞ宜しくお願いいたします。

IDAスペシャル対談


大村あつしさん

IT解説書から小説まで幅広く手がけるマルチ作家。2007年に発表した小説『エブリ リトル シング~人生を変える6つの物語~』(ゴマブックス)は、20万部を超える大ベストセラーとなり、舞台化や海外でも翻訳出版されている。またその1篇である障がいをテーマにした「クワガタと少年」は、絵本や動画にもなっており、道徳教育の教本として使用されている。ほか、ビジネス書など著書多数。

AIと仮想通貨時代をテーマにした話題の新作『マルチナ、永遠のAI。』。この中には人工知能(AI)を持ったロボット犬「AIDON」が登場。偶然にも当協会の通称である「IDA(アイダ)」と重なる文字が。

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対談撮影場所:ピッツェリア ローロ (Pizzeria Roro)